『ブナの山旅』。
ブナの森を愛する著者が10年間に亘り日本全国のブナ林を巡って、その内お奨めの120箇所を選りすぐって紀行文として紹介する1冊です。
“私が続けてきた「ブナの山旅」は、山頂を踏む事を目的とした登山ではありません。ブナの森の生き物たちの姿を眺め、スキンシップし、生命の営みを感じながら、植物や動物といっしょの時間を共有したり、ブナの森を生活の基盤としている人達と触れ合うことが目的です。・・・”(冒頭文より)
“かつては、ブナは日本人の生活に密着した木だった。しかし、樹木の価値が経済性で評価されるようになってから、ブナは役に立たない木という烙印を押され、各地で「ブナ退治」といわれるほどの大伐採が行われるようになった。”
油分が少ないため腐りやすく、雪の圧力に耐える期間が長い為、内部に力が蓄積されていて、乾燥するとその応力のため曲がりやすい事などから建築用材としては不向きとされてきたそうです。
温暖化、里山の荒廃、鉄砲水などの被害が叫ばれる今日、この様な1冊をめくりながら自然と人間の長い関わり方に思いを馳せています。
坪田和人著
山と渓谷社 2,100円