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印旛沼ポタリング日記

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2012年 02月 26日

江戸の女ブロガーのこと

療養中に読んだ本の続きです。

「きよのさんと歩く大江戸道中記」。
いささか事大主義的な命名に少し腰が引けたが、ぱらぱらめくる内に、これはチョッと面白そうだぞとレジに向かった。奥州は鶴岡藩の富裕な商家の女将、三井清野という31歳の女性が供の手代を一人伴って行った東日本一周の大旅行日記である。当時は庶民の旅行は表向き相当制限されたいたが、お伊勢参りという名目であればかなり自由に往来が許されていたようである。
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その彼女が、延べ108日間を掛けて巡った距離がなんと617里(2,420キロ)という。内容は、彼女がその旅程で見聞きする事ををこまめに記しているのだが、大体大まかにいって、その日の行程、立寄ったところ、食べたもの、そして宿とその料金。手短な感想を付け加えるのも忘れない。
読んでいて、ふと気付いた。この流れ、どこか身近に感じるものがある。そうだ、これは正に江戸時代の女ブロガーなのだと。盟友上総守殿によれば、歩録とも書く様だが、正にそれを地で行く道中記である。矢張り、一日10里近くも移動(馬や駕籠も頻繁に利用するが)すればお腹も空くだろう。団子の類は良く食べている。そして、結構左党なのも共感を呼ぶところだ。(この辺りも、自転車ブログのテーマと相当共通するものがある。)
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女性が歴史のページにに記録される事の少なかった時代、彼女の事はこの旅日記以外は分かっていない。しかしながら、江戸末期、黒船の来航もまだ予感されないこの時代、ひとりの女性の生々しい息遣いが200年後の今日に伝わってくる。正に、時代を超えた女ブロガーというべきであろう。コメントを投稿出来ないのが玉に傷ではあるが、十分楽しめる一冊だ。

金森敦子著
筑摩書房 950円

by imba_potter | 2012-02-26 20:41 | 自転車(アイテム)


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